GoogleのInstant Pagesがアクセス解析に与える影響

2012年01月19日 00:10

プリレンダリングとは

W3Cのワーキンググループがまとめている仕様「Page Visibility API」(2012年1月の時点でDraft)を活用した機能の一般名称です。Googleが2011年8月にリリースしたChrome 13で「Instant Pages」という機能として実装され、名前が知られるようになりました。

プリフェッチとの違い

昔、Firefox 7などに実装されたプリフェッチは、単純なHTMLの先読み機能でした。

ネットワークが遅く、読み込み時間がボトルネックになっていた時代には多少の意義がありましたが、一つのページで読み込まれる画像やCSS、JSなどのファイル数が増え、さらにJavaScriptなどによるブラウザ上の処理に時間がかかるようになった今では、あまり意味のないテクノロジーになってしまいました。

一方、プリレンダリングは、画像の読み込みやJavaScriptの処理など、ページのレンダリング(表示)に必要なすべての処理を行う点が異なります。リンクをマウスのホイール(中央ボタン)でクリックし、リンク先ページをバックグラウンドのまま新しいタブで開くのと同じイメージです。レンダリングが終わった状態でそのリンクをクリックすると、瞬時にリンク先ページが表示されるから「インスタントページ」、というわけです。タブを切り替えた時の操作性に近いですね。

リリース当時の解説:Instant Pages on Google Chrome

ChromeのInstant Pagesを有効にする方法

W3Cの仕様は、ページがレンダリングされたのか、裏に隠れているのか、一番前に表示されているのか、などの状態をブラウザがJavaScriptなどのプログラムに伝える方法を定義しているだけです。ChromeのInstant Pagesは、その仕様を活用したプリレンダリングの実装例といえます。

Chromeの場合、通常はページにmetaタグを追加することで、あらかじめ読み込んでレンダリングしておくべき次のページを明示的に指定します。

例:<link href=“https://example.org/index.html” rel=“prerender” />

ユーザーが次にどのページに移動しそうかがはっきりしているページでは役に立ちますが、この予測の精度が低いと、ネットワーク帯域が無駄に消費されるだけでなく、CPUリソースもムダに使われてしまい、通常のサイト操作が重くなります。長いので分割したページや、イントロ的な扉ページなどで使うのが効果的、とされています。

Googleの検索結果ページでも実装されていました。アルゴリズムは不明ですが、検索結果に表示されたリンクのうち、ユーザーがクリックする可能性が高いもののみ、プリレンダリングを行うそうです。

ページビューが計測されるタイミングは?

計測ツールがPage Visibility APIに対応していない場合は、プリレンダリングが終わる頃、リンクをクリックする前にページニューがカウントされます。Chromeの予想通りユーザーがそのリンクをクリックした場合は、すでにロードとレンダリングが終わっているので、重複ページビューは発生しません。クリックしなかった場合は、裏でレンダリングされて実際は閲覧しなかったのに、ページビューが発生したままになります。

実際、どうなのか?

Chrome 13の安定版がリリースされた2011年6~8月には少し話題になったものの、実際に動作するのを見たことがありません。「見た」とか「スゴイ!」という体験談も聞きません。 
今回、検証するために英語版Googleで「Whitehouse」を検索し、ワザとらしく一位のリンク上でカーソルを泳がせて、しばらく待ってからクリックして見ました。ところが、特に変化はなく、読み込みとレンダリングに時間がかかります。

早くもお蔵入りしたInstant Pages 

実は、2011年12月にリリースされたChromeのバージョン16で、Instant Pagesの機能が削除されたようです。「まだアナウンスしていないけど、機能を外した」というGoogle社員からの回答が公式フォーラムでありました。   

近い技術であるインスタント検索についても、日本語の場合は漢字変換が終わる前に発動してしまい使い勝手が悪いと不評だったためか、「古いブラウザを使っている場合はこの機能を無効にした」というアナウンスがありました。

体験・検証する前になくなってしまったのは残念ですが、新機能をリリースしてみて、 利用状況や反響をみながら大胆に切り捨てていくアプローチはGoogleらしいですね。  

結論  

というわけで、Instant Pageがアクセス解析に与える影響は12月以降は減りつつある、というのが現時点での結論です。

が、復活を望む声もあり、どうなるか分かりません。W3CのVisibility APIがドラフトではなく正式な勧告になった後に、FirefoxやIEが実装する可能性もあります。そもそも、タブブラウザが標準になった現在、裏でレンダリングされ表示されていないのにページビューとしてカウントする現在の各種アナリティクスツールの仕様はどうなのか、という疑問も残ります。ユーザーがページに注意を向けた時を閲覧としてカウントする方法については、いつか改めて考えてみたいと思います。